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住宅ローンの繰上返済はお得?メリットとデメリットを解説

住宅ローン繰り上げ

更新日:2024年3月

住宅ローンを返済中の方の中には、「住宅ローンの繰上返済はした方がいいの?」「するとしたらどんな方法があるの?」という疑問をお持ちの方が多いと思います。

住宅ローンの繰上返済には、返済期間を短くする「返済期間短縮型」と毎月の返済額を軽くすることができる「返済額軽減型」があります。

いずれも利息の総支払額を抑える効果があるため、経済的メリットはありますが、どちらの方法を選ぶのが適切かは、個々人によって異なります。

この記事では、住宅ローンにおける2種類の繰上返済の特徴、繰上返済自体のメリット、デメリットについて解説していきます。

住宅ローンの繰上返済には2つの種類がある!

住宅ローンの繰上返済のタイプは、「返済期間短縮型」「返済額軽減型」の2つに分かれます。それぞれの特徴は以下の通りです。

返済期間短縮型

  • 毎月の返済額に変化はない
  • 返済期間が当初より短くなる
  • 返済期間が短くなるため、利息軽減効果が高い
返済期間短縮型

返済額軽減型

  • 毎月の返済額を減らすことができる
  • 返済期間は変わらない
  • 返済期間短縮型より、利息軽減効果が低い
返済額軽減型

返済期間短縮型と返済額軽減型どちらが良い?

返済期間短縮型と返済額軽減型、いずれの方法も利息の総支払額を抑える効果はあります。住宅ローンの利息の総支払額は、借入金額が多く、返済期間が長いほど大きくなります。そのため、残債が減り返済期間も短くなる「返済額軽減型」の方が、残債が減るだけで返済期間が変わらない「返済額軽減型」よりも利息の軽減効果が高いのは当然だといえます。

【繰上返済の種類ごとの効果】

繰上返済の種類 残債を減らす効果 返済期間を短縮する効果
返済期間短縮型 あり あり
返済額軽減型 あり なし

返済期間短縮型が合っている人

それぞれの返済方法は特徴が異なるため、自身に合っている方法を選択する必要があります。返済期間短縮型が合っている人の具体例として、「定年退職以降まで返済期間が続く予定だが、繰上返済をして現役中に完済してしまいたい」、「住宅を賃貸に出し、自身は別の住居に移り住みたい」「高い金利で借りているのでなるべく早く完済してしまいたい」などの希望をお持ちの方が挙げられます。

それぞれの希望を、「現役中の完済」、「賃貸経営」、「高い借入金利」という言葉にまとめて解説します。

まず、「現役中の完済」です。定年退職後に住宅ローンの返済が続いていると、多くの方は家計収支が赤字傾向になり、金融資産の取り崩しが必要になります。例えば50歳で30年ローンを組んだ場合は、80歳まで返済が続きます。返済機関短縮型の繰上返済で、完済時年齢を65歳~70歳程度まで短くしておくと、「リタイア後も返済を続けていけるだろうか」という不安を解消することができます。

次に、「賃貸経営」です。住宅ローンの規約には、「債権者が居住していること」が条件になっているのが一般的です。金融機関は、賃貸経営用の事業用融資と住宅ローンを分けているからです。住宅ローンの完済をしてしまえば、自宅を貸すことは自由になります。

最後に、「高い借入金利」についてです。住宅ローンの支払利息の負担は、金利が高い人ほど多くなります。審査結果や、借り入れた時期などが理由で比較的高い金利で借りている場合は、残債と返済期間の両面で支払い利息の低減効果がある返済期間短縮を選ぶのは、理に適っています。

返済額軽減型が合っている人

返済額軽減型が向いている人には、「毎月の収支が赤字なので、住宅関連支出を抑えたい」「今後の支出が増加予定または収入が減少予定なので、毎月の返済額を下げておきたい。」などの希望をお持ちの方が挙げられます。住宅ローンの返済において重要なことは「滞りなく返済を続けること」です。返済が遅れると、高額な遅延損害金の支払いが必要になります。

繰上返済の方式を選択する際には、利息の総支払い額の軽減効果ばかりでなく、返済能力も鑑みることが大切です。
ここまでの解説を、下記の表にまとめました。

【繰上返済の種類と特徴】

繰上返済の種類 特徴 向いている人の具体例
返済期間短縮型 返済期間が短くなるため、利息軽減効果が高い
  • 定年退職以降まで返済が続く予定の人
  • 住宅を貸すことを検討している人
  • 高い金利で借りている人
返済額軽減型 毎月の返済額を減らすことができる
  • 毎月の収支が赤字の人
  • 今後支出の増加が見込まれる人
  • 今後収入の減少が見込まれる人

住宅ローン繰上返済の大きなメリットとは?

繰上返済の明確なメリットは、利息の総支払額が軽減できることです。では、実際にどの程度の軽減効果があるのでしょうか。ここでは繰上返済をする場合としない場合を比較することで、その効果を見てみます。

繰上返済をする場合としない場合

下記の条件の住宅ローンに対し、1,000万円の繰上返済をしたケースで、効果を検証してみます。

【前提条件】
借入額:5,000万円
返済期間:30年
金利:年1.5%
返済方法:元利均等返済
繰上返済:5年経過時に1,000万円を繰上返済する

毎月返済額 利息の総支払額 総返済期間
当初返済金額 172,560円 12,121,600円 30年
返済期間短縮型実施後 172,560円 8,299,445円 23年4ヵ月
返済額軽減型実施後 132,456円 10,130,543円 30年

(出典)知るぽると 繰上返済シミュレーションを使用し筆者作成

この表からわかるとおり、返済期間短縮型では利息の総支払額は、約1,212万円が約829万円に下げられており、利息軽減効果は約382万円にもなります。同時に返済期間は6年8ヵ月も短くなっています。

一方、返済額軽減型では、利息の総支払額は、約1,212万円が約1,013万円に下げられていますが、利息軽減効果は約200万円程度です。利息の軽減効果は返済期間短縮型より少ないですが、毎月の返済額は約4万円程度軽減できています。

繰上返済のタイミングは?

繰上返済を行うタイミングは、早いほど利息の軽減効果が大きくなります。

先述の例を基に、今度は繰上返済のタイミングを返済開始から10年経過後のケースで計算してみました。

【前提条件】
借入額:5,000万円
返済期間:30年
金利:年1.5%
返済方法:元利均等返済
繰上返済:10年経過時に1,000万円を繰上返済する

毎月返済額 利息の総支払額 総返済期間
当初返済金額 172,560円 12,121,600円 30年
返済期間短縮型実施後 172,560円 9,252,569円 23年10ヵ月
返済額軽減型実施後 124,132円 10,547,381円 30年

(出典)知るぽると 繰上返済シミュレーションを使用し筆者作成

10年経過時に繰上返済を行ったケースでは、返済期間短縮型の利息の総支払額は、約1,212万円が約925万円に下げられており、利息軽減効果は約287万円あります。ただ、5年経過時の利息軽減効果約382万円よりは、その効果が約95万円下がっています。

返済額軽減型については、利息の総支払額は、約1,212万円が約1,054万円に下がっており、利息軽減効果は約158万円程度あります。こちらも、5年経過時の利息軽減効果約200万円と比較すると、その効果は約42万円低くなっています。ただ、毎月返済額は124,132円に下げられており、これは5年経過時に返済額軽減型の繰上返済を行った場合の132,456円よりも効果的だといえます。

繰上返済のデメリットとは?

繰上返済はメリットが大きいですが、デメリットがあることも忘れてはいけません。将来の資金計画も考えながら活用するようにしましょう。

以下が主なデメリットになります。

【繰上返済のデメリット】

  • 取り消しができない
  • 手元資金が減少する
  • 団体信用生命保険の効果が薄れる

繰上返済は取り消しができません。手元資金が減少することもあるため、借り入れ 後に資金の必要性に気づくということがないように慎重に判断しましょう。また、繰上返済をすると残債が減少するため、団体信用生命保険の保障額も下がることになります。万が一の際に手元資金を残しておいた方がよかったということもあるため、必要保障額を把握した上で繰上返済の判断をするようにしましょう。

繰上返済をすべきか判断する際のポイントは?

住宅ローンは、経済的にも精神的にも重荷となるためとにかく早く返してしまいたいと考える方は多いと思います。しかし、繰上返済をすべきかどうかを判断する際には、確認しておいた方が良いポイントがあります。
住宅ローンは、借入金額自体は高額であるものの、他のローン商品と比較すると返済期間は長く、金利も低い傾向があるため、慌てずに無理のない返済計画を立てることが大切です。繰上返済をする前には、以下のポイントをチェックしてみましょう。

【繰上返済をすべきか判断する際のポイント】

  • 収入減少への備えや生活資金はあるか
  • 将来のライフイベントの資金は準備できているか
  • 定年退職までに完済するプランになっているか

1つ1つ解説していきます。

収入減少への備えや生活資金はあるか

収入が減少しても住宅ローンの返済額は変わりません。むしろ、変動金利で借りていて、金利が上がった場合は、返済額が増加してしまうこともあります。

勤め先の業績低迷などによる収入減少については、想定しておいた方が無難です。基本給を下げる施策は従業員からの反発が強いため、会社側も簡単に決断できるものではありません。しかし、残業代抑制のための定時退社推進や、基本給以外の各種手当の見直しなどが行われても不思議ではありません。

繰上返済を急ぎすぎ、手元資金が少ない状況で収入が減少してしまうと、家計に余裕がなくなり、返済が滞ってしまうことがあります。

もし、収入が減少したとしても、転職や副業、片働きの場合は共働きにするなどの選択肢があります。そのような選択肢を取るための時間的猶予のために、生活費の数ヵ月分~1年分程度の資金が手元にあるかどうかは確認しておきましょう。

また、やむを得ない事情で返済が苦しくなった際には、すぐに銀行に相談することが大切です。銀行によっては、返済を一時的に猶予してくれる場合もあります。
相談せずに返済を無視していると、最悪の場合は自宅が競売にかけられてしまい、退去の上、自己破産に陥ってしまうことがあります。

将来のライフイベントの資金は準備できているか

将来のライフイベントとは、子供の進学などのことをいいます。
繰上返済を急ぎすぎると、手元資金がなくなってしまい子供の学校の授業料などが払えなくなることがあります。特に高額になりやすい大学や専門学校の資金が確保できているかどうかは、よく確認をしておきましょう。

定年退職までに完済するプランになっているか

先述の繰り返しになりますが、住宅ローンは定年退職までに完済するのが得策です。年金暮らしで毎月の返済を行うことは楽ではありません。また、退職金を繰上返済に使ってしまうと、老後の生活資金が足りなくなってしまう可能性があります。
老後にも住宅ローンの返済が続いてしまう予定の方は、返済期間短縮型の繰上返済によって、退職前に完済する予定にしておくことが老後の安心に繋がります。

繰上返済を行なう際の注意点

繰上返済を行う際には以下の注意点があります。

  • 住宅ローン控除額が適用できなくなる場合がある
  • 金利が低い場合は利息軽減効果が小さいことがある
  • 病気や失業の緊急時資金が足りなくなることがある
  • 手数料がかかることがある

住宅ローン控除が適用できなくなる場合がある

住宅ローン控除を受けるための要件には、返済期間が10年以上であることが定められています。返済期間短縮型の繰上返済をすることによって、返済期間が10年以下になってしまった場合は、住宅ローン控除が利用できなることがあります。繰上返済の前には、その繰上返済を行った場合の新しい返済期間を銀行に確認し、その返済期間でも住宅ローン控除の対象になるのかを税務署に確認しておくことが必要です。

(参考)
国税庁 繰上返済等をした場合の償還期間

金利が低い場合は利息軽減効果が小さいことがある

繰上返済のメリットは、支払い利息が軽減されることです。しかし最近は1%を下回るような低金利の住宅ローンが当たり前になってきているため、繰上返済のメリットは過去よりも小さくなっている傾向があります。また、投資の成功体験がある方を中心に、手元の余剰資金は運用する方が有利だと考える方もいます。

病気や失業の緊急時資金が足りなくなることがある

繰上返済によって手元資金が少ない状況で、大病を患い多額の医療費がかかってしまうと手元資金が足りなくなってしまいます。
また、失業によって収入が減少した際も、手元資金がなければ返済が滞ってしまう可能性があります。繰上返済を行う場合でも、緊急時の資金は確保しておくようにしましょう。

手数料がかかることがある

どの住宅ローンも繰上返済はできます。しかし、繰上返済手数料がかかる金融機関、繰上返済の最低限度額が定められている金融機関もあります。

もし、これから住宅ローンを選ぶのならば、「繰上返済手数料0円」「繰上返済金額に条件なし」といった金融機関を選ぶとよいでしょう。

また、繰上返済には、「一部繰上返済」と「全額繰上返済」があります。
銀行によっては一部繰上返済の手数料を無料にしています。一部繰上返済で手数料がかかる銀行の場合は、繰上返済の回数がなるべく少なくなるように、まとめるなどの工夫が必要です。

全額繰上返済の場合は、手数料がかかるのが一般的です。念の為、繰上返済の手数料が利息の減額分を超えないか、金融機関に確認をしておきましょう。

繰上返済ではなく、借り換えという手段もある

返済額軽減型の繰上返済を検討している方は、「毎月の返済額を下げたい」という目的があるはずです。その場合は、金利の低い金融機関への借り換えも選択肢に入れると良いでしょう。
借り換えによって、手元資金はあまり使わずに毎月の返済額を軽減できる可能性があります。
ただし、一般的に借り換えの際には、住宅ローンの事務手数料などの諸費用がかかってしまいます。SBI新生銀行では、事務手数料が定額型の住宅ローンを扱っており、比較的コストを抑えた借り換えが可能です。また、一定の諸費用を住宅ローンに含めて借り換えをすることも可能であり、手元資金をできるだけ残す借り換えプランも選択できます。住宅ローンの借り換えを判断するためには、複数のパターンのシミュレーションを行う必要があるため、SBI新生銀行の住宅ローン相談を利用してみることをおすすめします。

余裕資金の活用法としては資産運用という選択肢もある

ここまでの解説のとおり、繰上返済には利息の総支払額の軽減効果があるため、家計改善の1つの手段であることは間違いありません。ただ、選択肢は繰上返済だけではなく、資産運用なども視野に入れることが大切です。仮に、繰上返済によって見込める利息軽減効果が30年で300万円程度の場合、1,000万円を元手にした投資で、30年で2,000万円の利益が見込めるという人であれば、繰上返済よりも資産運用を優先するのも一案です。ただ、投資にはリスクが伴うため、繰上返済をするか、資産運用をするかの選択は、慎重に行う必要があります。

執筆者
遠藤様

遠藤功二

えんどう こうじ

  • CFP(R)
  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)

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[2024年1月22日現在]