住宅ローンの変動金利とは?金利以外にも要注目!

住宅ローンを選ぶ際、変動金利・固定金利・当初固定金利などの金利タイプ選びは最初に悩むことになるポイントです。なかには、今後の住宅ローンの金利動向を予想して決めようと、新聞や雑誌、インターネットで情報を収集している人もいるかもしれません。
そこで、このコラムでは金利タイプのメリットやデメリットが分からず悩んでいる人のために、今回は金利タイプの一つ「変動金利」にスポットをあてて解説していきます。変動金利がどのような人に向いているか、そして変動金利の注意点も把握していきましょう。
目次
住宅ローンの変動金利とはどのようなもの?
住宅ローンの変動金利は、一般的に半年ごとに金利が見直される金利タイプです。見直し時に参考にされる金利は見直し時点の市場の金利です。市場の金利が上昇すれば、変動金利も上昇しやすくなりますし、住宅ローンの金利が上昇すれば、毎月の返済額も増えることになります。
なお、借り入れ開始から数年間、もしくは借入期間を通じて金利の見直しがない「固定金利」よりも変動金利のほうが金利は低めに設定されているのが一般的です。
- 特定の市場金利には連動せず、独自の判断で金利を決定している金融機関もあります。
変動金利の仕組み
次に住宅ローンの利率がどのようにして決められていくのかを解説しておきます。
下記の図のとおり、一般的な住宅ローンの借入金利は、各金融機関が定める基準金利から、所定の金利を引き下げることで決定されます。

引き下げ幅は、変動金利の場合、返済期間中変わらないのが一般的です。近年は金融業界内の競争原理が働いていることもあり、多くの金融機関が大幅な引き下げ幅を提示しています。
一方、基準金利は変動する可能性があります。一般的に、変動金利の基準金利は短期プライムレートを基に決定されます。短期プライムレートは、金融機関が優良企業向けに融資する際に使用している金利で、日銀の政策金利の影響を受けます。日銀が利上げ(政策金利を上げること)をすれば基準金利が上がることで借入金利が上がり、その後利下げをすれば基準金利と共に借入金利も下がるというのが変動金利の通常の仕組みです。

変動金利のメリット・デメリット
ここで変動金利のメリットとデメリットを解説します。
変動金利のメリット
変動金利のメリットは以下のとおりです。
<変動金利のメリット>
- 固定金利よりも金利が低い
- 引き下げ幅が全期間一定である
以上の2点について下記で詳しく解説します。
一般的に固定金利よりも金利が低い
多くの金融機関では変動金利の利率が固定金利の利率を下回るように引き下げ幅が設定されています。金利変動リスクがあることを考慮しての措置だと考えられます。もし、逆に固定金利の利率が低ければ、リスクをとって変動金利を選ぶ人は少数派だと思われます。返済期間中に金利が上がってしまう可能性はありますが、一般的に借入当初の利率が固定金利よりも低く設定されている点は、変動金利の大きなメリットです。
引き下げ幅が全期間一定
引き下げ幅が全期間一定であることは、変動金利のメリットです。実は、固定金利タイプのうち「当初固定金利タイプ」は、返済期間中に引き下げ幅が変更になります。引き下げ幅は、当初借入金利適用期間中は大きくなっていますが、その期間が終了すると縮小されるのが一般的です。もし、基準金利が一定であれば、途中から借入金利が上昇するということになります。当初固定金利タイプがこのように商品性がやや複雑になっていることと比較すると、全期間引き下げ幅が一定である点は、変動金利のメリットだといえます。


変動金利のデメリット
変動金利のデメリットは以下のとおりです。
<変動金利のデメリット>
- 金利上昇リスクがある
- 借り換え先が見つかりにくい
以上の2点について以下で解説します。
金利上昇リスクがある
変動金利の最大のデメリットが、金利が上昇した際に、毎月の返済額が上昇してしまうことです。特に子育て世代の方は、教育費用の上昇と住宅ローンの金利上昇が重なると、家計が赤字になりかねません。変動金利を選択する際には、目一杯の金額を借りるのではなく、ある程度金利が上昇しても家計が成り立つ金額に抑えることが重要です。その計算は後述する住宅ローンシミュレーションで試算することが可能です。
借り換え先が見つかりにくい
借り換えは、金利が高い金融機関から金利が低い金融機関に借り入れ先を変更することです。借り換えには、事務取扱手数料や登記関連費用などの諸費用がかかります。そのため、諸費用を上回るほどの総返済額の大幅な改善がないと、借り換えをする意味がありません。
変動金利は引き下げ幅の競争が激化していることもあり、多くの金融機関で魅力的な低金利を提示しています。このため、変動金利を借りた方が、さらに大幅に金利の低い金融機関を探すことは難しくなっています。変動金利を選択する方は、借り換えの選択肢はないものとして慎重に金融機関を選ぶことが大切です。金利以外の選択ポイントは、後述します。
変動金利をおすすめするのはこんな人!
変動金利をおすすめできるのは以下のような人です。
-
今後の政策金利が変わらない、もしくは下がると考える人
住宅ローンの変動金利は、一般的に政策金利の影響を受けます。そのため、今後市場金利が上がると考えている人は、選ばないほうが賢明です。金利は今後しばらく変わらない、または下がると考える人は、選択肢の一つになります。 -
金利が上昇して返済額が上がったとしても、対応できるくらいの余裕がある人
金利の上昇の幅が大きいと、それだけ返済額も上がります。変動金利を選ぶのであれば、想定以上に返済額が増えることも予想しておいてください。
変動金利の注意点とは?
上述した通り、変動金利の場合金利が上昇すると返済額が増えるため、毎月の負担増も覚悟しておかないといけません。また、変動金利は半年に一度見直しがあります。そのタイミングで固定金利への変更を行うことができる金融機関もありますが、変動金利以上に固定金利が上昇している場合もあるので注意が必要です。また、金利タイプ変更時に手数料がかかる場合もあるため確認しておきましょう。
最終的には、「手数料を払ってでも固定金利にするか」「変更せずに変動金利のままにしておくか」について考慮したうえで決めないといけません。金利の変更手数料をなるべく払いたくないのであれば、「どこまでの返済金額ならば変動金利で毎月返済を続けていけるか」について住宅ローン契約時までに考えておくことをおすすめします。
変動金利の最新の動向
2022年10月28日に開いた日銀の金融政策決定会合では、短期金利の政策金利を下記のとおり決定しました。
「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利 を適用する。」(引用)
(出典)2022年10月28日 日本銀行 当面の金融政策運営について
日銀は2016年に当座預金の政策金利残高にマイナス金利を導入してから、一貫して当該政策を継続しています。このため、変動金利の基準金利は低いまま維持されています。リスクをとって固定金利よりも利率が低い変動金利を選んだ方に、現状軍配が上がっています。しかし、この状態が続く保証はどこにもないことはいうまでもありません。
(参考)日本銀行 公表資料・広報活動
金利タイプ別総返済額のシミュレーション
ここで、金利タイプごとの毎月返済額と総返済額を試算してみます。変動金利は、一定の金利上昇があるものと仮定します。
<借入条件>
- 【借入金額】
5,000万円 - 【金利タイプ】
変動金利タイプ、当初固定金利タイプ(10年固定金利の後は変動金利に移行)、長期固定金利タイプ -
【借入金利】
2022年10月時点のSBI新生銀行の金利を参照し、変動金利の基準金利は、11年目から+2%上昇するものとする-
変動金利は変動金利(半年型タイプ)タイプ<変動フォーカス>を選択
(参照元)住宅ローンの金利一覧 新規でお借り入れの方
https://www.sbishinseibank.co.jp/retail/housing/interest/interest_rate/new.html
-
変動金利は変動金利(半年型タイプ)タイプ<変動フォーカス>を選択
- 【借入期間】
35年 - 【諸費用】
比較を単純化するため、なしとする -
【シミュレーションツール】
SBI新生銀行ウェブサイトのツールを使用
(参照元)SBI新生銀行 新規借り入れシミュレーション
https://www.sbishinseibank.co.jp/retail/housing/simulation/
変動金利タイプ | 当初固定金利タイプ | 長期固定金利タイプ | ||
---|---|---|---|---|
1〜10年目 | 金利 毎月返済額 |
年0.45% 128,690円 |
年1.05% 142,310円 |
年1.60% 155,553円 |
11〜35年目 | 金利 毎月返済額 |
年2.45% 162,649円 |
年2.65% 171,104円 |
|
総返済額 | 64,169,586円 | 68,350,751円 | 65,362,751円 |
(筆者作成)
上記表からわかるとおり、変動金利タイプは当初の借入金利が低いため、11年目以降に金利がかなり上がり、毎月の返済額が長期固定金利タイプを追い抜いても、総返済額は最も低い金額になっています。
もちろん金利が上がるタイミングによって、有利不利の結果は変わります。一般的に、残債が多い状態で金利が上がると返済額の上昇幅も比較的大きくなります。対策として、繰上返済をすると、残債が減りますので、金利上昇によって総返済額が増加する影響度を抑えることができます。
住宅ローンシミュレーションを使えば、金利が上がることを想定して、さまざまなパターンを試算することができます。
金利以外にも要注目!
変動金利や固定金利は、金利の高低差で大きく返済金額が変わる可能性があります。そのため、どうしても目先の金利や将来の金利動向にばかり目が向きがちです。しかし、住宅ローンを利用する際には、金利以外にもチェックしておきたいことがあります。まずは、手数料についてです。
住宅ローンを契約する際は、さまざまな手数料がかかり、金額は金融機関によって異なります。同じ金利であっても、手数料の金額によっては、低金利の恩恵を感じられない可能性もあるのです。今から住宅ローンを探すならば、手数料について 見落とさないようにしましょう。
また、住宅ローンの借入時に付帯して加入する「団体信用生命保険(団信)」の内容も重要です。
団信は、債務者の死亡や高度障害時に、保険金で残債が完済される生命保険です。最近は、ガンの罹患時を保障するガン団信や、一定の介護状態時を保障する介護保障付きの団信もあるため、商品内容をよく確認しましょう。
「固定金利、変動金利どちらがいいのか分からない」「どの金利タイプも一長一短ある」と迷ってしまい、一つの金利タイプに絞れない場合は、固定・変動を組み合わせることができるミックスローンもおすすめです。たとえば、固定金利5割、変動金利5割という組み合わせにして、急な金利上昇のリスクに備えることもできます。
ただし、住宅ローンの金利タイプの組み合わせができる商品はどの金融機関でも利用できるわけではありません。そのため、自分の希望に合った組み合わせを選択するために、相談サービスを利用することをおすすめします。最近は、自宅でもテレビ電話を使ったオンライン相談を受け付けている金融機関が増えているため、積極的に活用しましょう。担当者が親切かどうかも、金融機関選びにおいては重要なポイントになります。
記事のおさらい
住宅ローンの変動金利とは
住宅ローンの変動金利では、一般的に半年ごとに金利が見直されます。見直し時に参考にされる金利は市場金利です。市場金利が上昇すれば、変動金利も上昇していき、金利が上昇すれば、返済金額も増えることになります。
変動金利のメリット・デメリット
変動金利のメリット
- 固定金利よりも金利が低い
- 引き下げ幅が全期間一定である
変動金利のデメリット
- 金利上昇リスクがある
- 借り換え先が見つかりにくい
- 本稿の内容は2020年2月に作成し2022年10月に更新したものです。

えんどう こうじ
- CFPR
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品の商品説明書等をご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる元本割れなどの固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。
本稿は、執筆者が制作したもので、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。
- 本資料は情報提供を目的としたものであり、SBI新生銀行の投資方針や相場観等を示唆するものではありません。
- 金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
- 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性をSBI新生銀行が保証するものではありません。
当行では具体的な税額の計算、および、税務申告書類作成にかかる相談業務はおこなっておりません。個別の取り扱いについては、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご確認ください。
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- 借入期間は5年以上35年以内(1年単位)、借入金額は500万円以上3億円以下(10万円単位)です。
- 変動金利(半年型)タイプ、変動金利(半年型)タイプ<変動フォーカス>は当初借入金利適用期間終了後、お客さまからのお申し出がない限り、ご契約時にご選択いただいた変動金利タイプが継続して適用となります。
- 当初固定金利タイプは当初借入金利適用期間終了後、お客さまからのお申し出がない限り、自動的に変動金利(半年型)タイプが適用となります。
- 変動金利(半年型)タイプ、変動金利(半年型)タイプ<変動フォーカス>、当初固定金利タイプを利用されている方は、金利変更時に当初固定金利タイプをご選択いただくことも可能です。ご選択にあたっては、手数料5,500円(消費税込み)がかかります。
- 各金利タイプは、金利情勢等により、やむを得ずお取り扱いを中止する場合もございます。
- SBI新生銀行ウェブサイトにて、借入金額や借入期間に応じた毎月の返済額を試算できます。
- 事務取扱手数料は安心パックをお申し込みの場合110,000円(消費税込み)、お申し込みされない場合55,000円(消費税込み)、変動金利(半年型)タイプ<変動フォーカス>をご選択の場合、借入金額に対して2.2%(消費税込み)を乗じた金額となります。それ以外に抵当権設定登録免許税、印紙税*、司法書士報酬、火災保険料等がかかります。*電子契約サービスをご利用の場合、印紙税は不要ですが、別途電子契約利用手数料5,500円(消費税込み)がかかります。
- ご融資の対象物件となる土地、建物に、当行を第一順位の抵当権者とする抵当権、または根抵当権を設定いただきます。
- パワーコール<住宅ローン専用>、SBI新生銀行ウェブサイトにて商品説明書をご用意しています。
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[2023年8月25日現在]